英国の生乳供給に懸念――後継牛減少で乳牛群縮小へ

英国では牛肉価格の高騰を背景に肉用交雑牛の生産が増え、乳用後継牛が減少している。高乳量で生産を維持する一方、乳牛頭数の縮小が続き、将来の生乳供給に懸念が強まっている。

環境畜産

藤井誠司

7/23/20261 min read

a british flag is on top of a cheese stand
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はじめに

英国の酪農産業では、将来の生乳供給を支える乳用後継牛の不足が懸念されている。背景には、牛肉価格の高騰を受けて、酪農家が乳用種の雌子牛よりも肉用種精液を使った交雑子牛の生産を優先する動きがある。

現在は1頭当たり乳量の向上によって生乳生産量が維持されていますが、乳牛そのものの頭数は減少している。若い後継牛の確保が進まなければ、中長期的な生乳供給力が低下する可能性がある。

肉用交雑牛の増加で後継牛が減少

英国政府のBritish Cattle Movement Service(BCMS)によると、英国本土で乳牛から生まれた子牛の頭数は2025年に前年比0.4%増加するとされている。しかし、その60%は肉用種を父牛とする交雑子牛で、将来の乳牛群を支える乳用種の雌子牛は32%にとどまった。

乳用種同士から生まれた雌子牛の登録頭数は2021年以降減少しており、2025年には前年比3.1%減の46万3,373頭となり、統計開始以来の最低水準となっている。

高乳量で生産量を維持

英国農業園芸開発公社(AHDB)は、現在の更新牛頭数で将来の生乳生産を維持できるか警戒している。

英国本土では直近の生乳生産量が過去最高水準となった一方、乳牛頭数は2%減少した。つまり、牛の減少を1頭当たり乳量の向上によって補っている構造である。

さらに、乳用雌牛では4~6歳の年齢層だけが前年より増えている。これらの牛は今後、産次数が進むにつれて淘汰が増えるため、十分な若い後継牛がいなければ乳牛頭数の減少が加速する可能性がある。

2026年3月には乳牛の淘汰頭数が前年同月比17%増加した。一方、高い牛肉収益を得るために、もう1頭交雑子牛を生産してから淘汰する目的で乳牛を通常より長く飼養する動きも見られる。

牛肉価格が繁殖戦略を変える

乳価が平均約34ペンス/リットルで推移する一方、牛肉市場は高値を維持している。この収益差が、酪農家による肉用種精液の利用を後押ししている。

遺伝改良や生産・流通体制の整備に加え、アンガスなど乳用牛との交雑種への需要も高まり、乳牛から肉用子牛を生産する経済的な魅力が強まっている。肥育牛価格はやや軟化しているものの、子牛や育成牛市場の採算性は依然として高い状況である。

世界で進む乳牛頭数の縮小

AHDBは短期的に乳用未経産牛の不足が続くとみる一方、世界的な乳製品需要の拡大や、2026年後半から2027年にかけての乳価上昇期待が、将来的な酪農投資を支える可能性も指摘している。

同様の問題は英国だけではありません。米国でも高い牛肉価格が交雑牛生産を後押ししており、乳用後継牛価格は記録的な水準にある。EUでも環境規制などを背景に乳牛頭数が減少している。

今後の生乳供給は、1頭当たりの生産性向上だけでなく、必要な後継牛をどれだけ安定的に確保できるかが大きな鍵となりそうである。

出典:https://www.foodagribusiness.world/dairy/meeting-future-demand-for-uk-milk

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