TMRの発熱・変敗を抑える有機酸活用、乳牛の安定給与に新たな注目

TMRは飼槽で空気に触れると酵母やカビが増殖し、発熱・嗜好性低下・栄養損失を招く。有機酸、とくにギ酸とプロピオン酸の併用は、発熱抑制と飼料衛生維持に有効な対策として注目される。

飼料

7/6/20261 min read

a group of brown and white cows standing next to each other
a group of brown and white cows standing next to each other

TMR安定性を左右する「給与後」の管理

乳牛向けTMR(完全混合飼料)は、設計・混合段階で栄養バランスを整えても、給与後に品質が低下すれば狙い通りの摂取にはつながらない。特に飼槽で空気に触れた後は、酵母やカビなどの好気性微生物が活動し、TMRの発熱、嗜好性低下、食べ残し増加、乾物摂取量のばらつきを引き起こす。

記事では、この好気的変敗を抑える方法として、有機酸、とくにギ酸とプロピオン酸の活用が紹介されている。両者は役割が異なり、組み合わせることでTMRの衛生性と安定性を高める実用的な手段となる。

変敗は酵母から始まり、発熱とpH上昇を招く

TMRが空気にさらされると、まず酵母が糖類や乳酸などを利用して増殖する。この過程で熱が発生し、飼料中のpHも上昇する。すると、カビやその他の好気性微生物が増えやすい環境になり、変敗が進行する。

その結果、飼槽内のTMR温度上昇、選び食い、食べ残し、目に見えるカビ、糖類などの利用しやすい栄養成分の損失が起こりやすくなる。平均の乾物摂取量が大きく落ちていなくても、給与ごとや牛群ごとの摂取量にばらつきが出れば、ルーメン環境の安定性にも影響する。

特に注意が必要なのは、高水分TMR、湿潤副産物を多く含む飼料、夏場の高温環境、給与後の放置時間が長い管理である。

ギ酸とプロピオン酸の役割

有機酸は、微生物の細胞内pHや代謝を乱すことで増殖を抑える。ギ酸は速やかなpH低下により、望ましくない発酵を抑え、初期段階での保存効果を発揮しやすい。一方、プロピオン酸は酵母やカビへの抑制効果が高く、給与中の好気的変敗対策に重要な役割を持つ。

このため、ギ酸とプロピオン酸を組み合わせることで、早期の酸性化と、酵母・カビの抑制という相補的な効果が期待できる。TMR中のpHは一定ではないため、作用するpH領域が異なる有機酸を組み合わせることには実務上の合理性がある。

実用面では「扱いやすさ」も重要

有機酸は抗菌効果が期待される一方、純粋な酸は腐食性、揮発性、強い臭気などの課題を伴うことがある。これらは作業者の安全、添加設備の耐久性、均一な添加に影響する。効果がある資材でも、現場で安定して使えなければ、TMR全体への効果は限定的になる。

そのため、近年は有機酸の機能を維持しながら、取り扱い性や設備適合性を改善した配合型製品への関心が高まっている。記事では、ギ酸とプロピオン酸をリグノスルホン酸塩系成分と組み合わせ、腐食性や揮発性を低減しつつ抗菌効果を維持する技術例が示されている。

示唆:TMR安定化は「暑い時期だけ」の対策ではない

TMRの好気的変敗は、夏場だけの問題ではない。高水分原料や湿潤副産物を使う場合、給与頻度が少ない場合、飼槽で発熱が見られる場合、選び食いや食べ残しが増える場合には、季節を問わず安定化対策が必要になる。

有機酸の利用は、単に飼料を酸性にする技術ではなく、発熱を抑え、栄養損失を減らし、衛生的な飼料状態を維持するための管理手段といえる。特にギ酸とプロピオン酸の併用は、TMRの品質を給与後まで保つうえで、実用性の高い選択肢として位置づけられる。

出典:Food & Agribusiness World「Dairy cow nutrition: Improving TMR stability with organic acids」
https://www.foodagribusiness.world/dairy/dairy-cow-nutrition-improving-tmr-stability-with-organic-acids

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