泥対策が増体を左右する 肥育場は「排水」と「乾いた休息場所」を見直せ
肥育場のぬかるみは牛の快適性を損なうだけでなく、維持エネルギーや管理作業を増やし、飼料効率と増体コストを悪化させる。重要なのは排水と乾いた休息場所の確保で、日本でも牛床・敷料管理への応用が可能だ。
畜産
藤井誠司
10/7/20261 min read
はじめに
肉牛肥育の収益性を考える際、多くの場合は飼料価格、素牛価格、疾病、増体成績などに注目が集まる。しかし、牛が毎日過ごす「牛床やペンの状態」も、肥育成績を左右する重要な要素である。特に雨が続く時期の泥やぬかるみは、単なる衛生上の問題ではない。牛の歩行や起立に余分なエネルギーを使わせ、横臥や反芻を妨げ、結果として飼料効率や増体成績に影響する可能性がある。
米国ネブラスカ大学は、フィードヤードにおける泥対策として、排水管理と乾いた休息場所の確保を重視している。日本とは飼養施設の形態が異なるものの、その考え方は和牛や交雑牛などの肉牛肥育にも十分応用できる。
飼料だけでは決まらない肥育成績
肉牛肥育の収益性というと、飼料価格、素牛価格、疾病対策などに目が向きやすい。しかしネブラスカ大学は、牛が生活するペンの状態も増体や飼料効率を左右する重要な経営要因だと指摘している。
特に問題となるのが雨天後の「泥」である。ぬかるんだ牛床では牛の移動や起立に余分なエネルギーを要し、快適な休息も妨げられる。さらに除糞や補修などの作業負担も増え、結果として増体コストを押し上げる可能性がある。
第一の対策は「水を溜めない」
最優先すべきは排水である。雨の後に水が速やかに抜けるか、低い場所に水が溜まっていないか、排水溝がふん尿で塞がれていないかを定期的に確認する。対策としては、牛床の凹凸修正、適切な勾配の確保、排水溝の清掃、外部からの雨水流入防止、堆積したふん尿の除去などが基本となる。
米国の屋外型フィードヤードでは、乾いた休息場所として盛土(ペンマウンド)を設け、高さ約1.5m、1頭当たり約2.3㎡を一つの目安としている。ただし、重要なのはこの数値をそのまま導入することではない。牛全頭が泥を避け、乾燥した場所で十分に横臥できる環境を確保することが本質である。
日本の肉牛肥育場ならどう応用するか
日本では米国型の広い屋外フィードロットより、屋根付き牛舎や半開放式牛舎が多い。そのため、大規模な盛土を設けるよりも、牛床そのものを乾燥した状態に維持することが重要になる。
具体的には、次のような管理が考えられる。
雨水が牛舎内へ流入しないよう、屋根・雨どい・排水路を点検する
ウォーターカップ周辺や飼槽前など、常に湿りやすい場所の排水を改善する
牛床の凹凸や低い部分を補修し、水が溜まらないようにする
おが粉、もみ殻、戻し堆肥などの敷料を適切に使用する
湿った敷料は上から追加するだけでなく、必要に応じて下層から除去する
除糞頻度を高め、ふん尿による排水阻害を防ぐ
特に日本では梅雨、秋雨、台風など湿潤期間が長くなることがある。雨そのものよりも、「牛床が何日間湿った状態のまま続くか」という視点で管理することが重要だろう。
乾いた牛床は増体対策でもある
増体が伸びない農場では、飼料設計や蛋白質、エネルギー濃度だけに原因を求めがちである。しかし、牛が十分に横臥し、反芻し、快適に休息できているかという環境面も確認したい。牛床が悪化すると、牛は立っている時間が増え、移動にも余分なエネルギーを使う。その結果、本来増体に利用されるはずのエネルギーが維持活動へ回る可能性がある。
したがって、 乾いた牛床 → 横臥時間の確保 → ストレス低減 → 採食・反芻の安定 → 飼料効率・増体の改善という考え方が重要になる。
まとめ
泥対策は単なる清掃や衛生管理ではない。排水を改善し、牛が乾いた場所で十分に休める環境を整えることは、牛の快適性を高めるだけでなく、飼料効率や増体成績、さらには肥育コストにも関係する。
米国のフィードヤードと日本の肉牛肥育場では施設構造が異なるため、ペンマウンドをそのまま導入する必要はない。しかし、「水を溜めない」「乾いた休息場所を確保する」という基本原則は共通している。
増体が伸び悩む農場では、飼料だけを見るのではなく、牛床・排水・敷料・横臥環境まで含めて確認することが、改善の第一歩になるかもしれない。
出典:https://www.beefmagazine.com/livestock-management/managing-mud-in-the-feedyard
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