ブラジル牛でメタン半減、飼料効率も改善

ブラジルの肥育試験で、メタン抑制添加剤により排出量が約50%削減、飼料効率も5%改善。環境対策と収益性向上を両立する技術として、商業化とカーボンクレジット活用への期待が高まる。

飼料

藤井誠司

4/27/20261 min read

A light-colored cow stands in a green pasture.
A light-colored cow stands in a green pasture.

概要

ブラジルの大手食肉企業ミネルバフーズと豪州の気候テック企業Rumin8、さらにサンパウロ大学(USP)が共同で実施した肥育牛試験により、メタン排出削減と生産性向上を同時に達成する結果が報告された。対象はブラジルで主流のネローレ種で、実際のフィードロット環境を想定した条件下で評価が行われている。

試験結果のポイント

本試験(120日間)では、添加剤を給与した牛群で以下の成果が確認された。

  • 腸内メタン排出量:50.4%削減

  • 飼料要求率(FCR):約5%改善

  • メタン排出原単位:77.2 → 39.6 g/kg増体へ低減

  • 総温室効果ガス削減量:約29.8t-CO₂換算

特に注目すべきは、「環境対策=コスト増」という従来の構図ではなく、飼料消費の低減=コスト削減にも直結している点である。

試験設計と実用性

試験は個体管理(80頭)と群飼(200頭)の両方で実施され、商業規模への適用を強く意識した設計となっている。飼料は粗飼料12%・濃厚飼料88%(主原料:トウモロコシ)という、ブラジル肥育の標準的配合であり、実務的な再現性が高いデータと言える。

技術の本質

Rumin8の技術は、天然由来の成分をベースに「ルーメン内のメタン生成経路を阻害」する仕組みとされる。従来の3-NOPや海藻系添加剤と同様の方向性だが、コスト・供給安定性・適用範囲(放牧含む)が商業化の鍵となる。

示唆①:収益と環境の“同時最適”が現実に

今回の結果は、単なる環境対応ではなく、FCR改善=利益改善を伴う点が重要。
→ 飼料高騰局面では特に導入インセンティブが強まる。

つまり今後は、「環境対応コスト」ではなく、「利益を生む環境技術」として評価されるフェーズに入る可能性が高い。

示唆②:カーボンクレジット市場との接続

本試験では第三者機関(Athian、FoodChain ID)による検証が進行中であり、排出削減量の“証明”が可能になる見込み。将来的には、クレジット化、食肉サプライチェーンでのプレミアム価格化が現実化する可能性がある。特に輸出国ブラジルにとっては、EUなどの環境規制対応として戦略的価値が高い。

示唆③:導入のボトルネック

一方で、普及には以下が課題となる。添加剤コスト($/頭/日)、長期安全性・残留評価、国ごとの規制承認、放牧体系での投与方法である。特に日本では「飼料添加物認可」と「コスト対効果」が最大のハードルになる。

まとめ

本試験は、メタン削減50%+生産性向上という非常にインパクトのある結果を示した。畜産は今後、「環境か生産か」ではなく、環境で稼ぐ産業構造へ移行する可能性がある。この技術が商業化されれば、飼料設計・価格交渉・輸出戦略まで含め、畜産バリューチェーン全体に変化をもたらす可能性が高い。

出典
https://www.feedstuffs.com/beef/results-of-brazil-cattle-methane-reduction-study-released

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