デンマーク酪農で進むジャージー化 環境規制下でホルスタイン超えの収益性に注目

デンマーク系ジャージー牛は乳量でホルスタインに劣る一方、高乳脂肪・高タンパクと低排せつ量により、リン酸権制約下では収益性が向上。環境規制対応型酪農として注目される。

畜産

藤井誠司

5/24/20261 min read

a brown cow standing on top of a lush green field
a brown cow standing on top of a lush green field

デンマーク酪農にみるジャージー牛の収益性向上

― 環境規制時代における乳牛品種戦略の変化 ―

1.乳量重視から「資源効率重視」への転換

オランダの酪農家事例では、従来主流のホルスタイン種から、デンマーク系ジャージー種への段階的転換が進められている。背景には単純な乳量競争ではなく、環境負荷制限下での収益最大化という考え方がある。

飼養構成は以下の通りである。

ジャージー牛

  • 約60頭

  • 乳量:約6,800kg/頭

  • 乳脂肪率:6.9%

  • 乳タンパク率:4.4%

カナダ系ホルスタイン

  • 約50頭

  • 乳量:約11,700kg/頭

  • 乳脂肪率:4.4%

  • 乳タンパク率:3.6%

ホルスタインは乳量で約1.7倍多い一方、ジャージーは乳成分が高く、乳脂肪・乳タンパク販売に優位性を持つ。

2.鍵となった「リン酸排出権」と家畜排せつ物規制

欧州酪農では窒素・リン排出規制が強化されており、オランダではリン酸排出権(Phosphate Rights)が経営上の重要要素となっている。

この事例では既存権利で、

  • ホルスタイン:約100頭飼養可能

  • ジャージー導入後:約130頭まで拡大

が可能となった。

ジャージーは体格が小さく、排せつ量も少ないため、

130頭のジャージーの窒素排出量 ≒ 100頭のホルスタイン

という効率性が示された。

結果として追加の排出権購入を避けながら頭数拡大が実現し、設備投資負担の抑制につながった。

3.単頭利益ではホルスタイン優位、それでも最終収益は逆転

乳量ベースの収益ではホルスタインが優位である。

乳収入換算では、

  • ジャージー:約11.62ユーロ/頭

  • ホルスタイン:約14.03ユーロ/頭

となり、乳量差が反映されている。

また飼料利益(粗飼料・濃厚飼料控除後)でも、

ホルスタインが約0.92ユーロ/頭高かった。

しかし環境制約を考慮し、リン酸1kg当たり飼料利益で比較すると逆転する。

  • ホルスタイン:0.167ユーロ/kg

  • ジャージー:0.198ユーロ/kg

差は約0.03ユーロ/kgに見えるが、年間では約5万ユーロ(約850万円前後:1ユーロ170円換算)の利益差となった。

さらに淘汰牛価値ではジャージーが低く、1頭当たり約1,000ユーロ不利とされるが、それを差し引いても年間約3万ユーロ程度の収益優位が残ると試算されている。

4.まとめ

今回の事例は、「乳量最大化=利益最大化」という従来型酪農モデルが変化しつつあることを示している。

ホルスタインは依然として高泌乳能力を持ち、総乳量では優位である。しかし環境規制、排せつ管理、乳成分評価、飼料効率を組み合わせると、ジャージーが有利になる局面も増えている。

今後、欧州では環境制約対応型酪農としてジャージー導入がさらに進む可能性があり、日本でも高付加価値乳市場向けや低環境負荷酪農モデルとして再評価される余地がある。

出典:https://www.dairyglobal.net/world-of-dairy/farm-visits/denmark-jerseys-cows-yield-a-higher-profit-than-holsteins/

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