インドの燃料用穀物拡大、農地8倍へ エタノール政策が食料・飼料需給に波紋

インドでE20政策が急拡大し、燃料向け農地は4年で8倍超に増加。トウモロコシやコメの燃料転用が進み、食料・飼料・水資源との競合が強まっている。

環境

藤井誠司

5/31/20261 min read

a group of people working in a field
a group of people working in a field

インドのエタノール政策拡大と農業構造変化

穀物由来燃料が急増し、農地利用に新たな競争が生じている

インドで進むエタノール混合政策が、農業構造や穀物需給に大きな変化を与えている。政府は輸入原油依存の低減と温室効果ガス削減を目的に、ガソリンへのエタノール混合率を急速に引き上げてきた。2025年には混合率20%(E20)を達成し、当初の目標を5年前倒しで達成した。

特に注目されるのは、燃料向け作物に関連する農地面積の急拡大である。調査機関Arcus Policy Researchによると、エタノール原料向け農地は2020~21年度の約70万haから、2024~25年度には約570万haに増加した。わずか4年間で8倍超に拡大した計算となる。

サトウキビ中心から穀物中心への転換

インドのエタノール政策は当初、余剰砂糖対策としてサトウキビ由来が中心であった。しかし現在はトウモロコシやコメなど穀物由来が主流になっている。2024~25年度には、公的燃料向けエタノールの68%が穀物由来となり、サトウキビ由来は32%にまで低下した。

特にトウモロコシの需要の拡大は顕著で、インドのトウモロコシ生産量の約29%がエタノール向けに利用されたとされている。栽培面積も約990万haから1370万haに増加している。

この背景には、インドが原油需要の約85%を輸入に依存している事情がある。中東情勢の不安や原油価格上昇が続く中、国内燃料確保を重視する政策が加速している。

飼料・食料との競合も拡大

一方で、穀物の燃料転用に伴う副作用も指摘されている。

トウモロコシ由来のエタノール製造ではDDGS(蒸留粕)が副産物として発生し、家畜飼料として利用される。この結果、大豆粕需要との競合が発生し、大豆価格や作付体系にも影響が出始めている。

また、政府備蓄米のエタノール転用も急増している。2024~25年度には過去最大となる520万トンのコメが燃料向けに割り当てられた。専門家からは、「食用にも利用可能な砕米が燃料へ回されている」との懸念が出ている。

さらに、水使用量の多いコメやサトウキビ生産拡大は、水資源負荷や土地利用競争を強める可能性がある。インドでは気候変動による干ばつや高温リスクも増加しており、農業資源制約は今後さらに強まるとみられる。

エネルギー安全保障と農業政策の両立が課題

インド政府はエタノール政策によって過去10年間で約1兆600億ルピーの原油輸入削減効果と、5440万トンのCO2排出削減効果があったとしている。

しかし、燃料向け需要の拡大は、食料安全保障・飼料需給・農地利用・水資源のバランスという新たな課題を生み出している。今後、インドがE20を超える高混合率を目指す場合、穀物・油糧種子・飼料市場への影響はさらに大きくなる可能性が高い。

出典:https://www.agcanada.com/daily/india-ethanol-push-drives-big-rise-in-land-farmed-to-make-fuel

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