大型肥育時代の落とし穴 猛暑が牛の増体効率を直撃、水・日陰・給餌戦略が収益防衛の鍵に
米国では大型肥育牛の増加で暑熱リスクが拡大。飲水量は1日100L超も。日陰、風通し、夕方給餌、脂肪添加などの対策が増体維持と死亡防止の鍵となる。
畜産
藤井誠司
5/16/20261 min read
猛暑期の肥育牛管理が重要性を増す背景
米国ではバーベキュー需要などを背景に牛肉需要が高く、肥育牛を従来より重い体重まで飼育する傾向が強まっている。その結果、夏場の高温ストレス(Heat Stress)リスクが高まっていると、Iowa Beef Center の専門家が警告している。
特に2026年夏は、エルニーニョ傾向による「比較的涼しく湿気の高い夏」が予測される一方で、6〜8月に断続的な猛暑期間が予想されており、急激な暑熱対策が必要になる可能性がある。
暑熱ストレスが肥育牛へ与える影響
暑熱ストレスは単に死亡事故だけの問題ではありません。実際には、その前段階として以下の悪影響が発生している。
飼料摂取量の低下
増体成績の悪化
飼料効率の低下
亜急性アシドーシス増加
免疫力低下
飲水量急増
特に市場出荷前の大型肥育牛ほどリスクが高いとされている。
また、黒毛の牛は太陽熱を吸収しやすく、白毛系より暑熱影響を受けやすい点も重要である。
実務上重要な暑熱対策
1. 日陰(Shade)の確保
調査では、日陰設備がある牛群の方が死亡率が大きく低下した。
ポイントは、遮光設備、地面温度低減、黒毛牛への優先設置である。
日本でも近年の猛暑では、簡易遮光ネット導入が増えている。
2. 風通し改善(Air Flow)
熱放散を促進するため、防風シート撤去、周辺雑草管理、マウンド造成などが推奨されている。
日本の高湿度環境では「風+湿気対策」が特に重要である。
3. 飲水能力の確保
暑熱時には飲水量が通常の約2倍に増えるとされている。
出荷前大型牛では、1頭あたり30ガロン超/日(約113L以上)必要になるケースもある。
重要ポイントは、水槽周辺スペース確保、給水速度確認、自動給水器能力確認、緊急時の仮設水槽準備である。
日本でも夏場は「飲めない」ことが採食低下へ直結している。
飼料戦略の見直し
発酵熱を避ける給餌時間
ルーメン発酵では大量の熱が発生し、摂食後4〜6時間でピークになる。そのため、夕方給餌、夜間採食誘導が推奨されています。これは発酵熱ピークを夜間の涼しい時間帯へ移す狙いがある。
脂肪添加の活用
脂肪はルーメン発酵熱をほとんど発生させません。そのため、エネルギー維持、熱発生抑制を両立できる。日本でも、保護脂肪、油脂系副産物、高脂肪副原料の活用余地がある。
電解質・バッファー利用
暑熱時には、発汗、よだれ増加によって電解質や重炭酸供給が不足しやすくなる。そのため、重曹、電解質製剤、酵母、暑熱対策添加剤などの活用も有効とされている。
MGA利用という興味深い結果
調査では、MGA(メレンゲステロール酢酸エステル)を給与していた未経産牛群の方が、暑熱死リスクが低かったという結果も紹介されている。これは、行動安定化、発情ストレス軽減、エネルギー消耗抑制などが関係している可能性がある。
まとめ
米国での大型肥育牛の暑熱リスクは、今後ますます注目されるべき課題である。特に飲水量の確保や、日陰、風通し、夕方の給餌、さらには脂肪添加などの対策を講じることで、肉牛の健康を維持し、生産性を高めることができる。そのためにも、これらの対策をしっかりと実施し、暑熱からの影響を最小限に抑えることが肝要である。
https://www.beefmagazine.com/livestock-management/preparing-for-heat-stress-in-feeder-cattle
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