EU配合飼料、静かな構造変化
EUの配合飼料は全体安定の中、家禽向けが相対的に堅調。鶏肉需要の定着を背景に、配合設計や機能性が競争力の鍵となっている。
飼料
藤井誠司
1/5/20261 min read
EU配合飼料市場の「安定」は、日本の飼料産業に何を示すのか。
EUにおける配合飼料生産は、直近1年で大きな増減がなく推移している。表面的には「安定」と映るが、その内側では畜種別・国別に明確な濃淡が生じており、この構造変化は日本の飼料業界にとっても重要な示唆を含んでいる。
まず注目すべきは、家禽向け飼料が相対的に堅調である点だ。EUでは環境負荷、価格、供給安定性の観点から鶏肉の位置づけが強まり、結果として家禽飼料の需要が底堅く推移している。これは「需要拡大」というより、他畜種と比較された相対優位の定着と捉えるべき動きである。
日本でも同様に、鶏肉は家計・外食・加工用途の中核タンパク源であり、EUの動向は中長期的な需給構造の収斂を示唆している。家禽向け飼料における配合設計、代替原料活用、疾病耐性を意識した機能性設計は、今後さらに競争力の源泉となる。
一方、豚用飼料はEU全体では横ばいから微減傾向にあり、国ごとの差が顕著だ。疾病や環境規制、畜産構造改革の影響を強く受ける地域では減産が進み、競争力を維持できる国に生産が集中しつつある。
この構図は、日本の養豚・飼料産業が直面する課題と重なる。すなわち、「全体需要は維持されるが、担い手は減る」市場であり、量の拡大よりも効率性・リスク耐性・付加価値が問われる段階に入っている。
牛用飼料についても、EUでは規制や疾病、環境政策を背景に長期的な縮小圧力がかかっている。これは反芻畜向け飼料が不要になるという意味ではなく、粗飼料との役割分担や環境対応型配合への転換が進むことを意味する。日本でも同様に、乳牛・肉牛向け飼料は「量」よりも「設計思想」が問われる局面にある。
総じて、EU配合飼料市場の安定は、「成長が止まった」のではなく、外部ショックを前提に調整し続ける産業構造へ移行した結果と見るべきだ。経済情勢、地政学リスク、疾病、環境規制が常態化する中で、飼料産業は需給変動への耐性を最優先事項としている。
日本の飼料業界にとっての最大の示唆は、①畜種別に異なる成長ロジックを前提とした事業設計、②疾病・規制を前提にした原料調達と配合の柔軟性、③「数量」ではなく「安定供給能力」を競争軸とする視点の重要性である。
EUは、日本より一足先にその段階へ入っており、その現在地は今後の日本市場を映す鏡とも言える。
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