米国にエルニーニョ接近、2026年の農業・物流リスクに警戒
NOAA(米国海洋大気庁)は2026年夏までのエルニーニョ発生確率を高く見込む。米国南部の多雨・低温、ハリケーン・竜巻、穀物物流への影響に注意が必要。
環境
藤井誠司
5/21/20261 min read
エルニーニョが米国農業・飼料需給に与える注意点
1. エルニーニョ発生の可能性が高まる
米国海洋大気庁(NOAA)は2026年5月14日時点で、2026年5~7月にエルニーニョが発生する確率を82%、2026年12月~2027年2月まで継続する確率を96%と示した。日本の気象庁も、夏までに発生する可能性が高いとの見方を示しており、2026年後半の世界的な気象リスクとして注目されている。
エルニーニョとは、太平洋赤道域東部の海面水温が平年より高い状態が続く現象である。日本と米国では監視海域や判定基準に違いがあり、日本は主にNINO.3、米国はNINO.3.4を基準とする。このため、同じ現象でも発表時期や表現に差が出る点には注意が必要である。
2. 米国では冬場に影響が強まりやすい
エルニーニョ時の米国では、冬に影響が出やすい。一般的には、アラスカ南部や米国北部で気温が高めとなる一方、カリフォルニアから南部・南東部にかけては低温・多雨になりやすい。これは穀物・畜産地帯の作業条件、道路・鉄道輸送、港湾物流に影響する可能性がある。
特に米国南部の多雨傾向は、圃場作業の遅れ、飼料原料の品質低下、河川輸送や港湾荷役の停滞につながる恐れがある。日本の飼料業界にとっては、米国産トウモロコシ、大豆粕、DDGSなどの供給・価格変動リスクとして見る必要がある。
3. ハリケーン・竜巻リスクにも影響
エルニーニョ時は、中部・東部太平洋でハリケーンが活発化しやすい一方、大西洋側では抑制されやすい傾向がある。これは、上空と地上付近で風の向きや強さが異なる「鉛直風シア」が変化するためである。鉛直風シアが強いと、発達中の熱帯低気圧の雲や渦が横にずらされ、構造が崩れやすくなる。その結果、ハリケーンの発生や発達が抑えられる場合がある。
また冬場にはジェット気流の流れが変わり、米国南部で竜巻などの激しい気象現象が発生しやすくなる場合がある。飼料原料の調達では、単に生産量だけでなく、内陸輸送、倉庫、港湾、電力インフラへの影響も確認すべきである。
4. スーパー化の可能性と不確実性
一部では、今回のエルニーニョが海面水温偏差+2℃以上の「非常に強いエルニーニョ」になる可能性も指摘されている。ただし、スーパーエルニーニョはNOAAやWMO(世界気象機関)の正式用語ではなく、メディア上の表現である。過去には2015~2016年に非常に強いエルニーニョが発生し、世界平均気温の記録更新につながった。
2023~2024年にもエルニーニョが発生し、世界平均気温は高水準となった。仮に2026年も強いエルニーニョとなれば、農産物生産だけでなく、家畜の暑熱ストレス、電力需要、輸送コストにも波及する可能性がある。
5. 日本の飼料・畜産業界への影響
日本は飼料原料の多くを輸入に依存しているため、米国の気象変動は価格・供給安定性に直結する。2026年後半に向けては、米国産トウモロコシ・大豆粕・牧草・副産物の需給、海上運賃、港湾混雑、為替の動きを一体で見る必要がある。
重要なのは、エルニーニョを「必ず不作になる現象」と単純化しないことである。地域や季節によって影響は異なり、作柄にプラスに働く場合もある。したがって、NOAA・気象庁・USDAなどの最新情報を継続確認し、調達先の分散、在庫水準の見直し、早めの価格交渉を進めることが実務上の備えとなる。
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