チコリ給与でメタン25%削減、乳量維持も確認 環境対応型牧草として注目

チコリを粗飼料として給与すると、乳量を維持したままメタン排出を約25%削減できる可能性が示された。乳脂率は低下したが乳量・乳成分量は維持され、環境対策型牧草として注目される。

飼料

藤井誠司

3/29/20261 min read

Field of delicate blue wildflowers in soft focus
Field of delicate blue wildflowers in soft focus

チコリ給与によるメタン削減と乳量維持の可能性

― 飼料設計・環境対応を両立する粗飼料の新たな選択肢 ―

1.研究の概要

近年、畜産における温室効果ガス削減が大きな課題となる中、飼料によるメタン排出削減の研究が進んでいる。本研究では、チコリと多年生ライグラスを粗飼料として給与した場合のメタン排出量、採食行動、乳量および乳成分への影響が比較された。

試験はホルスタイン32頭を用いて4週間実施され、チコリまたはライグラスを単一粗飼料として給与し、採食量、乳生産、メタン排出量などを測定した。

2.主な研究結果

研究の最も重要な結果は、チコリ給与によりメタン排出が大きく減少した点である。

主な結果は以下の通り。

  • メタン排出量:約26%減少

  • メタン排出量(DMI当たり):約24%減少

  • メタン強度(乳量当たり):約25%減少

  • 乾物摂取量:差なし

  • 乳量(FPCM):差なし

  • 乳脂率:約11%低下

  • 乳中尿素:約52%低下

  • 採食時間:チコリの方が長い

  • 採食速度:チコリの方が遅い

つまり、乳量を維持したままメタン排出を約25%削減できる可能性が示された。

3.なぜメタンが減ったのか(ルーメン発酵の変化)

チコリ給与では水素発生量が増加しており、ルーメン内の発酵経路が変化した可能性が示唆されている。
チコリは繊維(NDF)が比較的短く、ルーメン滞留時間が短くなることで発酵パターンが変化し、メタン生成菌の活動が抑えられた可能性がある。

また、チコリに含まれる二次代謝物質がメタン生成菌に影響を与えた可能性も指摘されている。

4.乳成分への影響

乳量自体は変化しなかったが、乳成分には変化が見られた。

特に重要なのは以下の点。

  • 乳脂率は低下

  • 乳中尿素は大きく低下

  • 乳タンパク質・乳糖量は維持

乳中尿素が低下した理由は、チコリの粗タンパク含量が低く、過剰アンモニア生成が減少したためと考えられる。これは窒素利用効率の改善という意味ではプラス評価できる。

5.チコリ利用のメリットと課題

メリット

  • メタン排出削減

  • 乳量維持

  • 乳中尿素低下(窒素利用効率改善)

  • 深根性で干ばつ耐性が高い

  • ミネラル含量が高い

課題

  • 永続性が低い(牧草更新が必要)

  • 過放牧や湿地放牧に弱い

  • 乾物率が低い

  • 夏に抽苔し品質低下

  • 放牧条件では摂取量が変動しやすい

つまり、環境対策牧草として有望だが、草地管理が重要という位置付けになる。

6.酪農経営への示唆

この研究から得られる最も重要な示唆は次の点である。

① メタン削減は「添加物」だけでなく牧草でも可能

これまでメタン削減は脂肪添加や添加物が中心だったが、粗飼料選択でも25%削減が可能という点は非常に大きい。

② 乳量を落とさず環境対応が可能

環境対策は生産性低下とセットになりやすいが、チコリは乳量維持しながらメタン削減という特徴がある。

③ 今後の飼料は栄養のみならず、環境への配慮も必要

今後の酪農では、飼料コスト、乳量、窒素排泄、メタン排出、乾燥耐性、草地更新コストを総合的に考えた牧草選択が重要になる。

チコリはその中で、環境対応型牧草の一つとして位置付けられる可能性がある。

出典:https://www.dairyglobal.net/health-and-nutrition/nutrition/can-chicory-cut-enteric-methane-emissions-and-maintain-milk-yield/

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