酪農の暑熱対策をAIで最適化 牛の呼吸・よだれを映像から自動判定
乳牛の暑熱ストレスを映像AIで早期検知する研究が進む。呼吸数やよだれ、姿勢を自動解析し、送風機や散水設備を必要な時だけ稼働させる技術として期待される。
畜産環境
藤井誠司
7/25/20261 min read
はじめに
暑熱ストレスは、乳牛の快適性だけでなく、採食量、乳量、繁殖成績、健康状態にも影響する重要な課題である。牛舎内では送風機や散水設備が有効だが、電力や水、設備維持費が上昇するなか、必要以上に稼働させることは経営負担となる。そのため、牛が暑熱ストレスを受け始める時点を正確に把握し、適切なタイミングで冷却を開始する技術が求められている。
個体差が大きい暑熱ストレス
暑熱への反応は、年齢、品種、毛色、泌乳段階、妊娠状況、乳量、ボディコンディションなどによって異なる。過去に暑熱を経験したかどうかも、その後の反応に影響するとされる。
米ミシシッピ州立大学では、呼吸数や行動を基にした4段階の評価方法を示している。正常時は毎分59回以下とされ、毎分60~99回では軽度、100~119回では中程度の暑熱ストレスと評価する。毎分120回を超え、口を開けた呼吸や腹部を大きく動かす呼吸が確認される場合は重度と判断される。
軽度の段階では、立っている時間の増加、落ち着きのなさ、牛同士の密集、軽いよだれなどが見られる。症状が進むと、泡状のよだれ、元気消失、頭を低く保つ行動が現れ、最重度では歩行困難や横臥、死亡につながる危険もある。
映像AIで牛の状態を自動解析
テキサスA&M大学の研究チームは、牛の映像から暑熱ストレスをリアルタイムで判定するシステムを開発している。中央テキサスの農場で飼養される140頭の映像を使用し、3種類のAIモデルを構築した。
第1のモデルは個体を認識し、第2のモデルは鼻先から口周辺を抽出する。第3のモデルは、口元の泡やよだれの有無と量を分析する仕組みである。現在は、照明、影、牛の重なり、品種や鼻の色の違いなど、実際の牛舎環境で生じる条件変化への対応を進めている。
さらに研究チームは、牛の腹部の動きを映像から読み取り、呼吸数を自動測定する技術も開発中である。連続する映像の差分や動きの方向を解析し、呼吸頻度を算出する。よだれ、呼吸数、姿勢、パンティングの程度を組み合わせることで、中度と重度の暑熱ストレスをより正確に区別することを目指している。
商業化に向けた課題
実用化には、休息場所、フリーストール牛舎、飼槽周辺など、牛が長時間滞在する場所へのカメラ設置が重要となる。牛を専用施設へ移動させず、自然な行動を継続的に記録できることが利点である。
一方、高性能で防水性を備えたカメラや、複数映像をリアルタイム処理する計算設備には初期投資が必要となる。研究チームは、AIの処理速度を高め、必要な演算能力を抑える改良を進めている。
暑熱ストレスの自動検知が実用化されれば、牛の状態に応じて送風機や散水設備を制御し、健康管理と冷却コストの両立につながる可能性がある。
出典:https://www.foodagribusiness.world/dairy/smarter-heat-stress-detection-in-dairy-cattle
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