エルニーニョとB50政策が揺らすパーム油供給―植物油市場に広がる価格上昇圧力
エルニーニョによる減産懸念と、インドネシアのB50義務化が重なり、パーム油の輸出余力は縮小する見通し。植物油市場全体に価格上昇圧力が波及している。
飼料環境
藤井誠司
6/28/20261 min read
パーム油供給に二重の制約
天候リスクとバイオ燃料政策が同時に市場を圧迫
世界の植物油市場で、パーム油の供給不安が強まっている。背景には、エルニーニョによる収量低下の懸念と、インドネシアのバイオディーゼル混合義務拡大がある。パーム油は世界の植物油輸出の約46%を占め、その供給の大半をマレーシアとインドネシアが担っているため、両国の生産・輸出動向は国際相場に大きく影響する。
エルニーニョによる減産懸念
マレーシア政府関係者は、エルニーニョによってパーム油の収量が8〜10%低下する可能性を示している。過去の2015〜16年の同様の気象条件では、マレーシアの収量が18%落ち込んだとされる。政府は24時間体制の気象監視や人工降雨などで被害抑制を図っているが、天候リスクは依然として大きい。
金融サービス会社Marexは、過去の強いエルニーニョ年の収量変化を参考に、マレーシアとインドネシアのパーム油生産が合計で453万トン減少する可能性を指摘している。さらに、インドネシアの在庫対需要比率は、過去52年で最低水準に近づく可能性があるという。
影響は時間差で表れる
パーム油の特徴は、天候ストレスの影響がすぐには全面化しにくい点にある。アブラヤシの生殖サイクルには9〜18カ月の遅れがあるため、水不足などの影響はエルニーニョ発生後1〜2年かけて顕在化する可能性がある。短期的には在庫が緩衝材となるが、在庫取り崩しと収量回復の遅れが重なれば、価格上昇が長引く展開も想定される。
実際、マレーシアのパーム油価格は2026年2月の安値から6月24日時点で15%上昇している。上昇要因にはエルニーニョ懸念に加え、ホルムズ海峡をめぐる商品相場全体の上昇も含まれる。
インドネシアのB50義務化
もう一つの焦点は、インドネシアが7月1日から導入するB50政策である。これは、バイオディーゼルへのパーム油系燃料の混合率を従来のB40から50%へ引き上げるものである。エネルギー安全保障を意識した政策だが、国内消費が増えることで輸出余力は縮小する。
CIMB Securitiesは、B50導入によりインドネシア国内で追加的に約300万トンのパーム油が消費される可能性を示している。天候要因による減産と、政策要因による国内需要増が同時に進めば、輸出市場への供給は一段と絞られることになる。
示唆:植物油全体の価格支持要因に
パーム油は単独の商品ではなく、大豆油、菜種油、カノーラ油など植物油全体の価格形成に影響する基準的な油脂である。パーム油の供給が引き締まれば、代替油脂への需要が高まり、油糧種子市場全体を支える要因となる。
今回の問題は、単なる天候不順ではない。気候変動に伴う生産リスク、バイオ燃料政策、エネルギー安全保障、地政学的な商品相場上昇が重なった複合的な供給制約である。今後は、エルニーニョの実際の被害規模だけでなく、インドネシアのB50運用、在庫水準、輸出量の変化が植物油市場の重要な注目点となる。
出典:https://www.agcanada.com/daily/el-nino-expected-to-reduce-palm-oil-production
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