ホルムズ海峡の肥料輸送が再開―尿素・硫黄市場に残る供給不安

ホルムズ海峡経由の肥料輸送は暫定合意後に再開し始めたが、滞船・機雷除去・生産設備被害が残り、本格回復は早くても8月以降との見方が強い。

環境

藤井誠司

6/30/20261 min read

a few farm machines in a field
a few farm machines in a field

ホルムズ海峡の再開は「安心材料」だが、正常化には距離

イラン戦争終結に向けた米国・イラン間の暫定合意を受け、ホルムズ海峡を通過する肥料関連貨物が動き始めた。戦争前、この海峡は世界の尿素貿易量の約3分の1、海上輸送される硫黄の約半分が通過する重要ルートだった。尿素は世界で最も広く使われる窒素肥料であり、硫黄はDAP(リン酸二アンモニウム)などリン酸系肥料の製造に欠かせない原料である。

ただし、輸送再開は直ちに市場の需給緩和を意味しない。戦争中に滞留した貨物が順次出ている段階であり、新たな販売契約や新規積み込みが活発化しているわけではないためだ。

硫黄64万トン、尿素42.7万トンが通過

6月15日の暫定合意後、価格報告会社Argusの分析では、約64万トンの硫黄がホルムズ海峡を出て、インドネシア、モロッコ、タンザニア、中国などへ向かった。戦争期間中の硫黄輸送量が合計8万トンにとどまっていたことを考えると、流れは明らかに回復方向にある。

尿素についても、CRUのデータでは合意後に42.7万トンが海峡を通過した。戦争中の27.5万トンを上回っており、リン酸肥料やアンモニアなど他の肥料関連貨物もやや増加している。

肥料価格は戦争中に急騰し、農家の施肥量削減を招いた。長期化すれば作物収量の低下や食料価格上昇につながるとの懸念があったため、今回の輸送再開は世界の農業市場にとって一定の安心材料である。

500隻超が滞留、空船の戻りは限定的

一方で、現場はまだ通常状態から遠い。湾岸内には500隻を超える船舶が滞留しており、海峡の交通量は戦争前の1日平均125隻に比べ、なお低水準にある。

また、現在出てきている貨物の多くは過去の契約分とみられる。市場に新たな供給余力を生むには、空のバルク船が湾岸内へ戻り、新規貨物を積み込む必要がある。しかし、機雷除去、滞船解消、安全確認、恒久停戦への道筋など、船会社が再入域を判断するには複数の条件が残っている。

さらに、国連の国際海事機関による船舶護衛活動が、攻撃報告を受けて一時停止したことも、合意の安定性に疑問を残している。

本格回復は早くても8月以降

CRUは、ホルムズ海峡を通る肥料輸送量が戦前水準に戻るには時間がかかると見ており、最良のシナリオでも本格的な交通回復は8月以降としている。現在も約60万トンの尿素が海峡内に滞留し、Argusは30万〜40万トンの硫黄が退出待ちと推定している。

加えて、湾岸地域の肥料生産施設も戦争中に被害を受けた。専門家は被害を比較的限定的とみるものの、修復には時間を要し、価格下落の速度を鈍らせる可能性がある。BIMCOは湾岸の肥料生産はおおむね回復可能としつつ、カタールやUAEではガス田・製油所被害の影響により、中期的に輸出が戦前水準を下回る可能性を指摘している。

今回の再開は、肥料市場にとって危機のピークが過ぎつつある兆しではある。しかし、物流・安全保障・生産設備の三つの制約が残る限り、価格や供給不安が短期間で完全に解消するとは考えにくい。世界の肥料市場は、なお「再開」と「正常化」の間にある。

出典:https://www.agcanada.com/daily/fertilizer-shipments-begin-exiting-through-hormuz-strait

グロース・ウイズ合同会社

国内外の農業を営む方々、地域活性化に取り組んでいる方々を支援します。

info@growthwith.onmicrosoft.com

080-2270-3723

© グロース・ウイズ 合同会社